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第300話 

「どうした?」

と遠藤西也が尋ねた。

若子はふと何かを思い出したが、まだ確信が持てなかったので、深く追及するのは控えることにした。「別に、大したことじゃないわ。ただ、この書類、結構大事なものばかりだから、次からは気をつけてね」

彼女は床に散らばっていた書類を一枚ずつ拾い始めた。

「いいよ、若子。俺がやるから」と遠藤西也は慌てて彼女のそばにしゃがみ込み、共に書類を集め始めた。

すると、二人の手が同じ書類に触れ合い、

若子は驚いたようにその手を引っ込めた。軽く口元を引きつらせて、少しばかり気まずそうな笑みを浮かべながら、拾い上げた書類を遠藤西也にそっと手渡した。

「西也、私、もう帰るわね。少し用事があって」と若子は言った。

「花を待たなくていいのか?今すぐ電話して呼び戻すよ」

「いいのよ、ちょうどいくつか片付けなきゃいけないことがあるから。今日は彼女と一緒にお昼を食べられないけど、また今度にするわ」

「それなら、どこまで行くの?送っていくよ」

「大丈夫よ、タクシーで行くから」

「それじゃ困るよ。俺が運転手を手配するから、そうすれば安心できる」と遠藤西也は譲らなかった。

「私……」と若子は一瞬断ろうとしたが、彼が心配している様子が伝わってきたので、結局頷いた。「それじゃ、お願いするわ」

......

若子が住まいに戻ると、まず初めに修に電話をかけた。

電話がつながると、彼女は冷ややかな声で言った。「藤沢総裁、朝に私の携帯に出たのはいいけど、どうして一言も教えてくれなかったの?おかげで他の人の電話を逃しちゃったわ」

一瞬の沈黙の後、修が答えた。「忘れてたんだ」

若子は呆れたような気持ちになった。この男が「忘れた」などと口にするとは、単なる言い訳だと感じざるを得ない。彼の記憶力がどれほど優れているか、自分が一番知っているのだから。

「わかったわ。仮に忘れていたとしても、私の友達に電話に出た時、自分が私の『夫』だって言ったんじゃないの?どうせそう言ったんでしょう?」

修がそう言ったからこそ、花が「彼女の旦那さんが電話に出た」と思い込んだに違いないのだ。

「その方が便利じゃないか?わざわざ『元夫』って言う方が変だろ?」と、彼はさらりと反論してきた。

「でも、実際は元夫なんだから、正直に言ってもらった方がよかったわ」

「わかったよ。電話
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